はじめに

 心理相談室と聞くと心に関する悩みを抱えている方が訪れる場所と思われるでしょうが、最初の入口が現実の行動に関する内容であることは珍しくありません。心と身体は切り離せないものであり、日々の癖や行動を修正しようと考える中で、自身の内面に触れることが必要になることもあるのです。

 この記事では行動についての悩みにどのようなものがあるのか、そして、どんな時にカウンセリングを利用することを検討していくことが良いのかを紹介していきます。

行動に関する悩みとは

 行動についての悩みと言われて皆さんはイメージが湧くでしょうか。定義を作るとすれば、「日常生活の負担や不適応に関連しており、自分でやめることが出来ない癖や習慣」と言うことができます。自分でコントロールすることが難しい何らかの行動によって、日々の生活が上手く送れていないのであれば、行動上の悩みを抱えていると言うことができるかと思います。

どのような相談が寄せられているのか

 例えば忘れ物や約束を守れない、仕事の遅刻などが挙げられます。対人関係で繰り返している行動をなくしたいと願う方もいらっしゃるでしょう。あるいは飲酒やギャンブルなどの嗜癖の問題、自傷行為や暴力行為などの危険行為も該当します。一つずつ詳しく見ていきたいと思います。

日常生活の規律に関すること

 我々が社会生活を営む上で、どうしても守らないといけないことがあります。それが、約束事や常識と言われるものです。人との約束を守ることや、勤務時間に間に合うように日々の予定を組むことが必要と言われて反論する人はいないでしょう。これらの規律は守れないと何らかの罰則を受けることもあります。難しいことにハッキリとした言葉で規律が伝えられることがなく、暗黙理に共有されていることもあります。そのため、環境が変わって以前よりも規律遵守の意識が求められると、途端に負担が増す方もいらっしゃいます。例えば転職や、学生から社会人になるなどの変化のタイミングに行動に関する悩みが生じることがあるようです。

対人場面で生じること

 相手を不快にさせてしまうことで悩まれる方がいらっしゃいます。例えばついつい嫌味を言ってしまうとか、相手を束縛してしまうというご相談があります。カウンセリング場面では、ご本人が意識的に問題だと感じていることが持ち込まれることが多いですが、ストーカーやDVなど法的根拠に基づいて禁止されている行動については、問題意識が乏しくても将来の破滅を心配されて来室される方もいらっしゃいます。

依存や嗜癖に関すること

 依存や嗜癖に該当する行動は、薬物、アルコール、ギャンブル、ゲーム、SNSなどの特定の対象に過度にのめり込むことが特徴です。自らの人生を台無しにしてしまうことも稀ではなく、すでに社会生活が困難な状況に陥っている人も多いため、なるべく早く改善に取り掛かることが大切です。しかし、依存や嗜癖の引力はとても強いため、カウンセリングが中断することが最も多い相談内容と言っても差し支えないかもしれません。医療機関の併用を要することがありますので、カウンセリングでは状況を窺って、まずはどのような支援が必要かを検討することになります。

危険行為について

 リストカットやオーバードーズなどの自傷行為や、他者への暴言暴力、人権を踏み躙る行為は危険行為と言えます。これらは自傷他害という言葉でまとめられますが、ときに命の危険を伴うため、行動自体が生じないようにしていくことが理想的です。もちろん、現実ではすぐに改善しないことの方が多いでしょう。背景に心の傷や他者への要望が存在していることが多く、心の叫びが行動として現れていると考えることができます。状況によっては医療機関はもちろん、警察などの公的機関とのやりとりが必要になることもあります。

(参考:「心の相談」に該当する悩み

行動の相談は考えるきっかけとなる

 以上、ご紹介したように行動の悩みとして持ち込まれる相談内容は多岐に渡りますが、いずれも放っておくと社会生活の不利益や破綻を招くものです。自らの意思で修正できれば良いのですが、なかなかに難しいことが常ではないでしょうか。

 背景には、性格や能力に関すること、他者との距離の持ち方、心身の変質、心の叫びがあり、これらが具現化したものであると見てきました。そのため「行動の相談」は今、何が起きているのかを考えていくための最初のきっかけとなり得ます。ときに問題意識が乏しいこともあるため、悪化するまで放置して大きな不利益を被ることがないようにしないといけません。

カウンセリングの利用を考えるタイミング

 自分で相談に行くタイミングを掴むことは難しいかもしれません。一つの判断基準は他者の意見だと思われます。「忘れ物が多い」とか「言葉がきつい」など、他者から嗜められることが増えてきたとしたら、この指摘を無視しない方がよいでしょう。

 カウンセリングで「他者に○○と言われていて…」とお伝え頂けると、この行動がなぜ起こっているのか、自助努力で解決可能か否かなどを一緒に考えることができます。カウンセラーに具体的なエピソードを伝えると状況が共有されやすいです。なるべく早期に相談にお越し頂く方がよいかとは思いますので、まずは専門家の意見を聞きに行くという気持ちで、申し込みをすることも良いと思います。

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