理想と現実の狭間で
様々なカウンセリングの場でお話をお聴きしていると、理想と現実とのギャップが、心の苦しみの一要素として理解されることは少なくありません。
そもそも理想を持つ、ということは様々な場面で、何かしらの原動力になりやすいものではあります。こうなりたい、こうありたい、あのようになりたい、こうであってほしいといった様々な理想を、自分もしくは身近な存在に向けることで、それが何かを始めるきっかけとなったり、物事を持続させるための動機づけになったりするでしょう。そういう意味では、人として生きる上での有効な心的作用ともいえます。
ただ、その理想ばかりに固執し過ぎてしまうと、いつのまにか現実の捉え方に偏りが生まれ、理想と現実に乖離を覚えやすくなり、気づけばそのことが悩みとなって心が支配されてしまいやすくなります。そうなると視野も狭まり、時に現実を悲観的に捉えてしまいがちとなり、生きづらさといったものに繋がってしまうことさえあるのだろうと思います。
たとえある理想形を強く求めていたとしても、その方にとってはそこに何らかの理由や意味合いがあるはずなので、そうした自分に気づき、そうなりがちな自分の在り方への理解を深めていくことで、固執からは少しずつ解き放たれ、心に余裕や自由を取り戻せていけるのですが、一人でそのことを探求するのは、なかなか難しい作業だろうと思うのです。

自分だけのストーリーを探して
こうした理想と現実との狭間で、知らず知らずのうちに心に苦しさや生きづらさを抱えてしまっていたとしたら、自分では気づかなかった理想や現実との向き合い方や心の偏り方を知り、理解を深めていくことが必要かもしれません。そして、理想だけに捉われず、自分だけのストーリーとしての現実を生きられるようになるために、絵画や音楽に例えるならば、自分だけが創り出せる彩や奏でられる音色を見出し、味わい、少しの自信を身に着けながら自由に表現していけるようになるために、カウンセラーの存在がお役に立つかもしれません。カウンセラーは、来談してくださる方が心の作業に創造的に取り組めるよう居続ける協同者です。
ご自身への理解を深めてもらえるよう、その方の心が動くペースを大切にしながら、お力になっていけたらと思っています。
カウンセラー田中